和光市駅前かわはら内視鏡・消化器内科クリニック

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【専門医が解説◎バレット食道について】

【バレット食道】


目次


■バレット食道とは

■バレット食道の原因

■バレット食道の症状とサイン

■バレット食道の診断方法

■バレット食道と食道腺癌の関係

■バレット食道の治療方法

■バレット食道の食生活と生活習慣による予防法

■バレット食道と日常生活

■バレット食道に関するよくある質問

■ご予約はこちらから

■バレット食道とは

バレット食道(Barrett’s Esophagus)とは、食道の粘膜が胃や腸に似た細胞へと置き換わってしまう病態のことを指します。通常、食道の内側は「扁平上皮」という組織で覆われています。この扁平上皮は、口から入った食べ物や飲み物が通過する際の摩擦には強いのですが、胃酸や胆汁などの消化液に対してはあまり耐性がありません。


ところが、胃食道逆流症(GERD)などによって胃酸が繰り返し逆流すると、食道の粘膜は絶えず傷つけられます。人間の体は損傷を修復しようと働きますが、その際に「腸上皮化生」という現象が起こり、胃や腸に似た粘膜細胞が食道内に生じてしまうのです。この異常な細胞置換を医学的に「バレット食道」と呼びます。


バレット食道そのものは直接的に症状を引き起こすわけではありません。しかし問題は、長期的に放置すると食道腺癌に進展するリスクが高まるという点にあります。つまり、バレット食道は単なる粘膜の変化にとどまらず、前癌病変(がんの一歩手前の状態)として重要視されているのです。


①バレット食道の歴史と発見

バレット食道は1950年代にイギリスの外科医ノーマン・バレットによって報告されました。当初は「食道の一部が胃に置き換わっている状態」と解釈されましたが、後の研究で「食道の粘膜が胃や腸に似た上皮に変化している状態」であることが明らかになりました。現在では、消化器内視鏡学や病理学の進歩により、診断基準や治療方針が確立されつつあります。


②逆流性食道炎との関係

バレット食道と逆流性食道炎は切っても切り離せない関係にあります。逆流性食道炎は、胃酸や胆汁が食道に逆流して炎症を繰り返す病気です。慢性的な炎症により、粘膜は自己防衛のためにより耐性のある腸型上皮に変化します。この適応的な変化がバレット食道の本質です。

ただし、逆流性食道炎がある人すべてがバレット食道になるわけではありません。統計的には、逆流性食道炎患者の約10〜15%がバレット食道へ進展するとされており、特に逆流が長年続いている人や、肥満・喫煙習慣のある人でリスクが高まります。


③どのように診断されるのか

バレット食道は、本人が自覚できる特徴的な症状がほとんどないため、内視鏡検査を受けなければ発見できません。検査で食道の粘膜を観察すると、通常の薄い白っぽい粘膜ではなく、胃や腸に似た赤みを帯びた領域が見えることがあります。これがバレット食道を疑うサインです。

さらに、確定診断には生検(組織検査)を行うこともあります。粘膜の一部を採取して顕微鏡で観察し、腸上皮の特徴を持つ細胞が確認されればバレット食道と診断されます。また、細胞の異型性(癌化の前兆となる変化)があるかどうかも評価され、今後の治療方針に大きく影響します。




■バレット食道の原因

バレット食道は単一の原因で発症するわけではなく、複数の要因が組み合わさることで進行します。以下に主要なリスク因子を詳しく解説します。


①胃食道逆流症(GERD)の影響

最も大きな原因は胃食道逆流症(GERD)です。胃酸や胆汁が食道に繰り返し逆流すると、粘膜が炎症を起こし、長期的に損傷を受けます。この状態が続くと、食道は「より耐酸性の高い細胞」に置き換わろうとし、それが腸型の上皮細胞です。結果としてバレット食道が発症します。

GERDのある患者のうち、5〜15%がバレット食道にバレット食道が見つかることがあり、長期の逆流・肥満・男性・高齢・喫煙などでリスクが高まります。


②肥満・生活習慣との関連性

肥満、特に内臓脂肪型肥満(腹部肥満)は、胃酸の逆流を助長する大きな要因です。脂肪が腹部にたまると胃が圧迫され、胃酸が逆流しやすくなります。近年、日本でも肥満人口が増加しており、これがバレット食道の増加につながっていると考えられています。

また、不規則な生活習慣や過食、夜食の摂取、長時間の座位も逆流を助長し、リスクを高めます。


③喫煙・飲酒

喫煙は食道の粘膜防御機能を低下させると同時に、下部食道括約筋を緩めて逆流を悪化させます。アルコールも同様に逆流を促進し、炎症の慢性化を引き起こすため、両者はバレット食道の進展に強く関与します。


④遺伝的要因や性別・年齢による違い

研究では、男性、特に50歳以上の白人男性に多く見られるとされています。日本においても男性に多い傾向があり、家族にGERDや食道腺癌の既往がある場合は注意が必要です。

参照:https://www.aafp.org/pubs/afp/issues/2022/1000/barrett-esophagus.html?utm_source=chatgpt.com




■バレット食道の症状とサイン

バレット食道は非常に厄介な病気です。その理由は、初期の段階ではほとんど自覚症状が現れないことにあります。多くの患者は、すでに逆流性食道炎の症状を抱えており、その延長線上でバレット食道が発見されるケースが多いのです。胸やけが慢性的に続いている人、食後に喉の奥が熱く感じる人、あるいは酸っぱい液体がこみ上げてくるような体験を繰り返す人は、逆流性食道炎が背景にある可能性が高く、その状態を放置することでバレット食道に進行してしまうことがあります。


症状が進むと、食べ物を飲み込む際にスムーズに通らないような感覚、つまり嚥下障害が現れる場合があります。これは、食道の粘膜に変化が起こり、炎症や狭窄が生じることによるものです。また、胸部の奥に重苦しい痛みや不快感を覚えることもあり、心臓や肺の疾患と間違えられるケースも少なくありません。さらに、逆流による胃酸が咽頭に到達すると、慢性的な咳や声のかすれが出現することもあります。このように症状は多岐にわたり、他の病気と区別がつきにくいのが特徴です。


バレット食道が長期にわたって進行した場合、最も注意すべきは癌化のサインです。食欲不振や原因不明の体重減少、吐血、便が黒くなるといった出血の兆候は、すでに前癌病変から食道腺癌へと移行している可能性を示しています。したがって、日常生活でこれらの異変に気づいた場合は放置せず、速やかに医療機関を受診することが必要です。



■バレット食道の診断方法

診断の中心となるのは内視鏡検査です。通常の食道粘膜は淡いピンク色で均一に見えますが、バレット食道では赤みを帯びた絨毛状の粘膜が胃に近い部分に広がって観察されます。この異常な粘膜を発見することが診断の第一歩となります。


しかし、内視鏡の肉眼的な所見だけでは確定できない場合もあります。そこで必要となるのが生検、つまり組織検査です。内視鏡を用いて疑わしい粘膜の一部を採取し、病理医が顕微鏡で詳しく観察します。そこで腸上皮の特徴を持つ杯細胞が確認されれば、正式にバレット食道と診断されます。さらに、細胞の形態に異常があるかどうか、すなわち異型性の有無を判定することも極めて重要です。異型性が強いほど癌化のリスクは高くなり、治療方針にも大きな影響を及ぼします。


診断が確定した場合には、定期的なフォローアップが欠かせません。進行度や異型性の程度によって観察間隔は異なりますが、異型性がない場合でも一から三年に一度は内視鏡検査を受ける必要があります。異型性が認められる場合には半年ごとに精密検査を行い、食道癌への進行を早期に発見できる体制を整えることが求められます。




■バレット食道と食道腺癌の関係

バレット食道が恐れられる最大の理由は、食道腺癌に移行するリスクがある点です。正常な食道粘膜が胃酸に繰り返しさらされると腸型の上皮に置き換わり、その細胞がさらに長期にわたり刺激を受けることで異型性を持ち始めます。この異型性のある細胞は、いわば癌の前段階に相当し、そこから食道腺癌が発生するのです。


統計的には、バレット食道の患者は一般の人に比べて30倍から40倍もの高い確率で食道腺癌を発症するとされています。ただし、すべての患者が癌に進行するわけではなく、年間で癌化する割合は0.1パーセントから0.5パーセント程度にとどまります。それでも、このリスクは決して軽視できません。特に高度異型性がある場合は、癌化の危険性が一気に高まるため、積極的な治療介入が必要となります。


このように、バレット食道は単なる「逆流による粘膜変化」ではなく、将来的な癌の発生と密接に関連する重大な病態なのです。




■バレット食道の治療方法

バレット食道の治療は、症状の程度、異型性の有無、癌化リスクの高さなどを総合的に判断して決定されます。


まず基本となるのは薬物療法です。特にプロトンポンプ阻害薬(PPI)は、胃酸の分泌を強力に抑制する薬剤として広く用いられています。これにより逆流性食道炎の悪化を防ぎ、粘膜の炎症を軽減することが可能です。ただし、PPIによってすでに置き換わった腸型の粘膜を完全に元に戻すことはできません。あくまで進行を抑える目的で使われます。


より進行した症例や異型性を伴う場合には、内視鏡的治療が検討されます。代表的なものがラジオ波焼灼術(RFA)であり、高周波エネルギーを利用して異常な粘膜を焼灼し、正常な粘膜の再生を促す方法です。また、限局した病変であれば内視鏡的粘膜切除術(EMRやESD)が有効で、病変部を切除して組織を病理検査に回すことで、治療と診断を兼ねることができます。


さらに進行して癌が確認された場合には、外科的治療として食道切除術が選択肢に入ります。しかし手術は身体への負担が大きく、合併症のリスクも少なくありません。そのため近年は、可能な限り内視鏡的治療で対応し、外科的切除は進行例や再発例に限定される傾向が強まっています。




■バレット食道の食生活と生活習慣による予防法

生活習慣の改善は、バレット食道の進行や再発を防ぐうえで極めて重要です。食事に関しては、脂肪分の多い料理や香辛料、炭酸飲料、カフェインなどは逆流を悪化させるため控えることが望まれます。夕食は就寝の二、三時間前までに済ませることが推奨され、食後すぐに横になる習慣は避けるべきです。


喫煙は粘膜の修復能力を低下させるだけでなく、下部食道括約筋を緩めて逆流を助長するため、禁煙は必須です。アルコールも同様に括約筋を弛緩させ、胃酸の分泌を増加させるため、節度ある摂取が求められます。


また、肥満は腹部に圧力をかけ、胃酸を食道に逆流させる大きな要因となります。そのため、適正体重を維持することは予防の要となります。日常的な運動やバランスの取れた食生活は、バレット食道だけでなく全身の健康を守るためにも有効です。




■バレット食道と日常生活

バレット食道と診断されたからといって、すぐに生活のすべてを制限しなければならないわけではありません。実際には、医師の指導のもとで薬物療法や定期的な検査を続けながら、普段の生活を大きく変えることなく過ごせる患者も少なくありません。ただし、食生活や睡眠習慣に注意を払い、ストレスをため込まないように心がけることが大切です。


ストレスは自律神経を乱し、胃酸分泌を増やす作用があります。睡眠不足も同様に消化器官の働きを不安定にさせ、逆流を助長します。そのため、規則正しい生活と十分な休養を意識することが、症状の進行を防ぐうえで効果的です。


また、日常生活で重要なのは「無症状でも安心できない」という認識を持つことです。バレット食道は症状がなくても進行していることがあり、癌化のリスクは常に存在します。したがって、医師が推奨する間隔での内視鏡検査を怠らず、長期的に経過を観察していくことが不可欠です。




■バレット食道に関するよくある質問

①バレット食道は必ず癌になるのか?

必ず癌になるわけではありません。年間で癌化する確率は0.1パーセントから0.5パーセント程度ですが、一般の人と比較すると明らかにリスクが高いため注意が必要です。


②どのくらいの頻度で検査を受けるべきか?

異型性がない場合は一から三年に一度程度で十分ですが、異型性がある場合は半年ごとに検査を受けることが推奨されます。


③薬で完全に治るのか?

プロトンポンプ阻害薬によって症状は改善しますが、腸型上皮そのものを完全に消失させることは困難です。


④普通の生活は可能か?

適切な治療と生活習慣の管理により、多くの患者は通常の生活を送ることができます。ただし、定期的な検査と医師の指導を守ることが前提です。


⑤予防できる方法はあるのか?

逆流性食道炎を早期に治療すること、肥満を防ぎ、禁煙や節酒を徹底することが最大の予防策です。


⑥食道がんとの違いは何か?

バレット食道は前癌病変であり、まだ癌細胞そのものではありません。しかし異型性が進行すると食道腺癌に移行する可能性があるため、経過観察が必要です。



■ご予約はこちらから

当院では、バレット食道なのかもと不安な方にもしっかりと診察と検査を行います。場合によっては、内視鏡検査のご提案もいたします。まずは、外来へご予約のうえご来院ください。24時間web予約が可能です。


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(予約リンク貼り付け)

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